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広島高等裁判所 昭和38年(く)25号 決定 1963年10月16日

本人 H(昭一七・一二・一九生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

職権をもつて調査するに、関係記録によれば、本件申立書は昭和三八年八月二一日義父国○安○が単独で原裁判所宛に「歎願書」と題する書面を提出し、これに対し原裁判所訟廷事務室は、右書面が原決定に対する抗告の趣旨であれば法定代理人である実母国○○子からの申立を要するものとして、右両名の出頭を求めたうえ右書面に実母国○○子の自署押印を補充したことが認められ、原裁判所はこれを適法な抗告の申立として取扱い一件記録を送付したものである。

ところで少年院法第一一条の規定による収容継続決定に対し抗告の申立ができるか否かについて考察するに、それについては少年院法自体に直接の明文は存しないが、少年法第三二条によれば保護処分の決定に対し抗告することができる旨規定しているところ、少年院法第一一条の規定による収容継続決定には当然少年法第二四条第一項第三号に基く少年院送致決定が存するのであり右保護処分の処遇上必要のあるときは、その当否の判断を本人を送致した家庭裁判所に求めたうえ原保護処分の内容(収容期間)を拡張するものであつて、保護処分決定に準じる性質を有することは明らかであり、それ故、少年審判規則第五五条は、収容継続申請事件の手続は、その性質に反しない限り、少年の保護事件の例によると定めているものと解される。従つて少年院長の収容継続申請事件に関する決定については少年法第二章第三節に規定する抗告の手続が適用され、同法および少年審判規則に定める要件と方式に従い不服申立の途を認めるのが相当であり、その抗告は適法になし得るものというべきである。

そこで本件申立の適否につき按ずるに、少年法第三二条の規定による抗告の申立は少年、その法定代理人又は附添人から二週間以内に申立書を原裁判所に差出すを要する(少年審判規則第四三条第一項)ところ、本件書面は「歎願書」と題する書面であつて、既に表題自体において妥当でないのみならず右書面の趣旨も本人の早期退院を望むものではあるが、その文面内容自体からは原決定に対し不服を申立てるものか否かは必ずしも明確でない。さらに、記録によれば本人は「昭和一七年一二月一九日生」であつて既に成年に達していることが明らかであつて実母国○○子に法定代理権はなく、本件原決定につき適法な抗告権を有しないものである。(義父に元来法定代理権の存しないことは勿論である。)

よつて本件抗告の手続はその規定に違反しているから、爾余の判断をするまでもなく不適法として棄却することとし、少年法第三三条第一項前段、少年審判規則第五〇条に則り、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 村木友市 裁判官 藤原吉備彦 裁判官 田原潔)

参考二

嘆願書

私儀

今回の判決に付いて判決後Yと面談して本人の意志を確めました所、Y真心から立派な社会人となり私の所で山仕事をやると言います故私も全力を尽してYの便生の第一歩のため尽してやります故是非帰らせて下さる様何卒此の段折入つて御願い申上げます。

三十八年八月二十一日

国○安○

実母 国○○子

溝部裁判官 殿

〔編注〕 原文のまま。溝部は担当調査官の名と思われる。

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